この写真集は1972年〜1995年、パリは六区モンパルナスのカフェセレクトでの写真が中心になっている。
カフェ・セレクトは、モンパルナス通りをはさんでクーポールの向かい側にある。他の店とは違って、観光客はほとんど来ない。街路に向かって籐椅子の並ぶテラスが開かれ、対照的にかつてはアメリカンバーとして栄えた内部にはカウンターが薄暗く続く。ここでワイングラスを手にお喋りの続く夜は、午前2時過ぎまで灯が消えることはない。煙草の煙が漂い、ワインの香りと酔った声が混ざり、人と人とのひしめき合いが音楽のように流れてくるカフェ・セレクト。
この店とここに集まる人々は、いきいきとして個性的でその振る舞いの自由さにフランスを感じ、それらを撮ることが私の日課になっていった。
ヘミングウエイの移動祝祭日にはこう記されている。
ーもしきみが幸運にも青年時代にパリに住んだとすれば、きみが残りの人生をどこで過ごそうともパリはきみについてまわる。なぜならパリは”移動祝祭日”だからだ。
あとで知ったことだがヘミングウエイの小説「日はまた昇る」にもこのセレクトが出てくる。寺山修司も一時ここの常連客であったらしい。
当時モンパルナスのざわめきの中にある自由は私にとってかけがえのないものだった。フランス文学が動機でやってきたパリで写真的経験ができたのは新たな発見でもあったし、可視化できる文化が目の前にあった。
帰国後撮った写真集「浅草」は同じく日本文化の可視化が動機であった。
2020年12月
初沢克利
[ 写真家・初沢克利 ]
早稲田大学仏文科中退、東京写真専門学院卒業。
1972年に渡仏する。モンパルナスに居住しながらパリの写真を撮りはじめ日本、フランスの広告界で活動する。
パリのモンパルナスにあるカフェ「セレクト」で撮ったパリの人々の写真を現地にて個展を開催する。
1983年帰国する。
「モンパルナス・深夜の客」/ 富士フォトサロン、「パリ・美し都の四半世紀」/ 三越恵比寿店、その他などで個展を開催する。
写真集に『MONTPARNASSE-深夜の客』(シティ出版)、『パリ・美し都の四半世紀』(集英社)、『浅草 2011-2016 六区ブロードウェイ日本人の肖像』(春風社)などがある。『フジ子・ヘミング 我が心のパリ』(阪急コミニュケーションズ)にて写真を担当。
初沢克利 写真集『パリ・左岸 深夜の客』144ページ
¥3,600(+ 税)
2020年12月18日(金)発売
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Asakusa, apart from being a historic district of Tokyo, is one that reflects the inimitable character of Japan. This traditional downtown area holds the classic spirit of the nation, a place still removed from the modernity of the city. Here, in the entanglement of the narrow streets, the roots of the culture are embedded. The area provides a fascinating glimpse into the contradictory ethos of the people, combining the imagery of post-war nostalgia with the undisciplined rough edges of a township struggling to enter the present day. It certainly cannot be classified as beautiful yet here lies its charmming uniquely Japanese.
初沢克利 写真集『浅草 2011-2016 六区ブロードウェイ 日本人の肖像』520ページ
¥7,000(+ 税)
2017年5月3日(月)発売(ご予約受付中)
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